第32回:「立呑み処 あさひ」@兵庫青木

うーん…どないしよかなぁ。でもここで逃げたら女が、いや、酒呑みがすたるで。長年あちこち酒場を徘徊してきても、初めての店というのは未だに躊躇してしまう。寧ろ、若かりし頃は怖いもん知らずの勢いだけで飛び込めたけど、歳と経験を重ねるごとに様々な現実を目の当たりにし、軟弱になっているのも事実なのだ。この日も然り。店の前を不審者のごときしばし往来した後、暖簾をくぐり静かに戸を開けた。こちらに気付いたお母さんと目が合った。「いらっしゃい!どうぞ!」笑顔を返し”よっしゃ!”心の中でガッツポーズを決めた。この瞬間の安堵と喜びを求め、日々徘徊してしまうのかもしれない。
阪神青木駅前の立呑み「あさひ」。少々ゴチャッとした店内、穏やかな照明、カウンターに並ぶ手作りの肴。初めてなのに一歩足を踏み入れた瞬間から妙に落ち着くこの感じ、アタリや。まずは無事の酒場潜入に乾杯!強い日差しを受け足早に進み火照った体に冷たいビールが染み渡る、同時に汗も滲み出る。それを察知してか否か「暑かったでしょ~」微笑むお母さんにグッとくる。うん、間違いない。ここはアタリや。再確認し酒のピッチも早まる。所望した豚ミミは塩であっさりと。プリコリのそれを噛み締めながら、お母さんと常連さんの話を聞くでもなく耳を傾ける。ビールも早々に飲み干し、酎ハイと冷奴でさらに涼をとる。心地よい空間に身を委ね、酒と肴をただ無心に楽しむ。これが幸せなんよ。遅れて登場したご主人、白帽と料理着に身を包み「いらっしゃい」と向ける笑顔がやさしい。お母さんとふたり並んだご夫婦の微笑ましいヤリトリを肴にまた酒も進む。多趣味なご主人が摘んできたワラビをサービスいただいた。エグミは一切なし、シャキッとフレッシュな食感と香りを存分に楽しめる。入店から目をつけていたシカ肉は知人が獲ったという。贅沢な厚切りで供されたその見事な肉色にうっとり。タタキ風に仕上げられ肉々しい噛み応えでありながらしっとりジューシィ。野趣溢れる力強い味わいに思わず唸ってまう。ご主人のドヤ顔も見逃さへんで。目の前で誘うオムレツはレンチン後の熱々に箸を入れると、細切れの肉と野菜がたっぷり!しっかり目の味付けで最後まで酒が止まらへんでかんわ。
御歳70を超えるご夫婦のにこやかさと温かさに包まれ、ご常連の楽しいひと時に参入させていただき、入店前の不安もどこぞへ。酔い時を堪能させてもうた。またひとつ、拠り所が増えた。せやから酒場開拓はやめられへんねん。

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