大スポ連載

第46回「こばやし」@大阪西九条

帰り道ちゃうけど途中下車してまで来てまう。他にも店知ってるけど、ココしか来ぇへん。そんなファンの多い「こばやし」。阪神ガード下に構えて37年目。ご夫婦一代で築き上げたとは思えぬほど素晴らしい年季の入りっぷりに、初訪問で一目惚れ。以来、足繁く通う常連のひとり…と言いたいところだけど、すっかりご無沙汰です。
暖簾をくぐると、穏やかなお父さん、動きも喋りもキビキビとしたお母さんの名コンビが笑顔で迎えて下さる。冷たいおしぼりでクールダウンしもって店内を見渡す。たくさんの写真、ココで出会った人々が関わるイベントのチラシなどが飾られ、いかに店と客との関わりが深いかが伺える。えぇ雰囲気に包まれ、大根おろしの辛味が爽やかなじゃこおろしでビールをグビッ。短冊メニューは開店当初から変わらず値段も据え置き。が、しかし、その日に無いものを頼むと「無いもん頼むな!」、お母さんの厳しい声が飛ぶ。とは、ご常連の談。キッツイな~と思うも、厳しく当たられるのは認められた証?何度キツく当たられてもまた来てまう、寧ろ厳しい声が嬉しい。そんなMな方が多いのもこの酒場の特長みたいやね。
名物どて焼きは、蒟蒻でカサ増しせず牛すじのみ。甘過ぎない味噌味もえぇねん。厚揚げをもっぺん揚げるあげ揚げは、裏メニューから定番化した人気の一品。男の人ってほんま揚げさん好っきゃな~、いつも薄ら笑いしている私だけど、コレはハマってもた。クリスピーな外とヤワとろな中のコントラストがたまらん!醤油かポン酢をお好みで。年季の入った分厚い鉄板上で重しをギュッと押す鍬焼きスタイルのイカ塩焼きは、焦げが香ばしくプリップリ。ただ焼いただけやのに(と言っては失礼やけど)妙にウマいねん。ビールからのハイボールを一気に飲み干し、麦ロックを所望。お母さん、目を見開いて「飲むん早やっ!」。ナイスツッコミ頂きました。私も少しは認められたやろか?
たっぷり鰹節を踊らせ焼きそばの登場。美味しそ~と見とれていると、「早よ混ぜて!」、お母さんのみならず隣さんからも鋭い声がかかる。扇風機の風で鰹節が飛んでしまうからだそう。ナルホドおっしゃる通り!慌てて全体をよくかき混ぜズズッとすする。肉や野菜、プリップリの麺にしっかりソースが絡んだソレは、何だか子供の頃の土曜のお昼を思い出させた。〆のつもりが、まわりさんの盛り上がにつられ、らっきょうで麦ロックの杯が進んでまうけど。お母さんが笑ろてるうちにおいとましましょか~。

第45回「カミナリ酒店」@大阪石橋

「おかえり~」「ただいま~」チリンチリ~ンと戸が開くと飛び交う合い言葉。
仕事終わりの軽く一杯から、今宵のがっつり酔いの場、はたまた友人との待ち合わせにと毎夜お客さんが集う、オープン6年目の立ち飲み「カミナリ酒店」。常連率が高くフラり立ち寄る一見さんは少なそうなのだけど、元気なスタッフさんが笑顔で迎えて下さるので安心。かく言う私もデビューしてまだ半年足らず。ドキドキ初訪問の時の事は今でもよく覚えている。ツンと澄まし顔でひとり静かに飲んでいたはずが、気付けばカウンターに移り、ご常連とワイワイいつもの調子で飲んでいた。挙げ句の果て、2軒目まで共にしてしまった。何がそこまで盛り上げたんか知らんけど、心地よい空気に酔いしれたんは間違いない。以来、ちょくちょく寄せてもらっている、今期のマイベストヒット酒場なのだ。
入店すると、席を確保するよりまず両替えすることから始める、明朗会計のキャッシュオンスタイル。必須ではないけれど、当たりのコインが出れば何でも一品タダになる!とあらば、両替えしない手はあらへん。
若いサラリーマン君がネクタイをゆるめながら冷えたビールをググッと飲る姿が清々しく、こちらもまずはビールから。次いで300円のドリンク2杯と気まぐれ2品がつくほろ酔いセット。お出汁をたっぷりと含んだなすのとろける舌触りよ。定番以外にもお造りやほっこりおばんざいが揃うんも常連さんには嬉しい。この日は数杯でサクッと仕上げ、後日また訪れた。やはりビールからのスタート、ほろ苦さっぱりセロリの浅漬けとともに。お塩でシンプルに、ぷりっぷりたこの天ぷら。以前から目をつけていた鶏皮ギョーザは、パリムニュジュワッ!ウマッ!揚げもん続きで酒も進む。ほな男前ジョッキいっとこか。ずっしり重みが酒欲食欲に火をつける。名物とりのカラアゲもお初にお目にかかります。大口で食らいつくと湯気があがる。あふほふっ。外カリッ中しっとりジューシィ。しっかり下味のついた好きなタイプやわぁ。熱々を頬張りハイボールで流した。飲み続きの日々を少しばかり反省し、ホッピーにシフト。大好きな玉子ポテサラがなくなってしまったので、卵つながりでベーコンエッグを所望。目玉はふたつにしてもろた。熱々の鉄板で供されたそれは、黄身に箸を入れるととろり流れ出すレア感がお見事。今宵、キミに満たされましたわ。
まだまだ常連枠ではない私。帰り際の「またね~」が嬉しく、早く「おかえり~」に昇格できるよう精進します。

第44回「Bistro SAI」@大阪なんば

大阪の日本酒立ち飲みブームの先駆け的存在である「最(さい)」の二号店としてオープン、本店とは違ったイメージでとリニューアルされてから4年目の「Bistro SAI」。こだわりの日本酒と洋食を楽しめる。日本酒を『お米のじゅーす』と表現するセンスに惚れましてん。日本酒と呼ぶより一層美味しそうやんか。ゴクッ、喉を鳴らし入った店内は8人ほどが立てるカウンターのみ。「いらっしゃいませ」、黒ベストに白シャツ、黄色のネクタイをキュッとしめたお姉さんのお出迎え。天使の笑顔は、男性のみならず女性の心をも癒してくれる。手始めに前菜盛り合わせに日本酒がついたレディースセット。この日は和歌山の「紀土」。華やかで透明感のある味わいが体に染み入る。自家製のホタルイカの燻製は、齧るとプチュゥッとはじけ、口いっぱいに燻製香が広がる。女性だけお得なんてズルイわ~っ!なんて声が聞こえてきそうですが、御仁方にも朗報。前菜とビールのセットが同価格で頂ける男前セットもございます。時間限定ゆえ、お早うお越しやす。あれもこれも飲みたい浮気性な私にピッタリな飲み比べセットを所望。生酒・純米・山廃と、確実に違いを楽しめる。うん、すばらしい組み合わせ。1日5食限定の岩手がもローストは目の前で蓋を取られた瞬間、煙とともに燻製香がもわっとあがる。さすがビストロ!姿を現したその美しいお肉。絶妙な火の通り加減で外こんがり中しっとりやわらか。噛むほどに旨味と燻製香が鼻から抜ける。すかさず日本酒を流す。肉には赤ワインを、という考えを根底から覆す見事なマリアージュですわ。
溶岩釜で焼かれるハート型のキュートな自家製ピザも、そんじょそこらのピザ屋やイタリアンには負けへんで。北海道産の小麦粉2種類を使った生地のサクモチッと感!トマトソースのジューシィさにとろけるチーズ、バジルの爽やかさ。濃厚かつ酸味とキレのある「土耕ん醸(どこんじょう)」を合わせた私、ナイスチョイスやん。ピザは直径30cmのボリュームゆえ、おひとり様には多いわ~な方には、超ミニサイズのおつまみピザもある。カリリッとクリスピーで、これはこれとてえぇアテになりますよってに。どんな時でも日本人の胃袋を刺激するカレーまでちょこっとサイズで供される。野菜の甘みたっぷり、ほどよくスパイシー。カレーと日本酒、合うやんか。
暖かな照明のしっとり空間で、豊富な日本酒とイケメンシェフの作る本気洋食を手軽に味わえる。これぞ立ち飲みの醍醐味やね。

第43回「しんみどう」@大阪岸里

食の都・人情の街、大阪にふさわしい一軒が西成にある。安くて旨くて、雰囲気良し。そして、美人ママが居てはる。そんな店を知らんのは損や。
お好み焼き・鉄板料理と韓国料理の「しんみどう」。オモロイ組み合わせやな~。それもそのはず、ママさんは韓国ご出身。日本に来られて21年目、お店を始められて20年目ということで、韓国×大阪の力強い口調に一瞬、圧倒されるも怯んではならぬ。ひとたび腰を据えればママさんワールドにハマッてしまうから。
乾杯のビールとともにお手製のお惣菜とサービスの小鉢が供された。辛いもん好きにオススメの「はんごろし」は、信州の野沢菜激辛キムチ漬け。好き♥
お話好きのママさん、あっちやこっちのお客さんと会話が弾みながらも、手も休むことなく動く。手際良く焼かれる看板メニューのしんみどう。イメージするところのお好み焼きにしてはエライ質素やけど、どないなってんの?スライサーですりおろしたジャガイモを主体にした一品とな。こんがり表面サクッ中しっとり。時折感じられるジャガイモのシャキッと食感が良く、バターと醤油の香ばしさがタマランねん。初めてやのにどこか懐かしいねん。ビールが進むねん。ブー焼きは先と似たビジュアルながら、お次は大根。ブーて豚ちゃうのん?ちゃいますねん。韓国語で大根がブーですんねん!メニュー表記の「ヘルシー」の理由になるほど納得。フワトロモチッ。あっさりゆずポン酢に一味パッパでいただくと、噛むほどに大根の甘みが溢れる。見た目はお好み焼き、食べると大根餅。まさに韓国と大阪の融合やね!リズミカルに調理され「メッチャオイシイカラ!」と、さらに強い口調でオススメされる塩焼きそばは生麺にこだわり、鉄板でしっかり炒めても口中でプリップリッと踊る。シンプルな味付けが後を引き腹パンでもスルスルいってまわ。
焼き上がりまでのつまみや箸休めには、ちゅるちゅるチャプチェ、旨辛な自家製キムチ、チシャに韓国味噌と包んでいただく脂が甘ぁい蒸し豚などの本場韓国料理もお忘れなく。どれも『オイシイもん食べてほしい』というママの想いが感じられる一品ばかり。美味しそうな顔を向けると返してくれる満面の笑みもたまらない。終始元気でイキイキとしたママにこちらも元気をもらい、お腹も心も120%満足!
親子二代で通う客、15年来通う客、小さな子連れで通う客…長年愛され続ける理由は、安さ旨さはもちろん、ママのお人柄ゆえ。この味とママに会いにまた酔(寄)せて頂きます。

第42回「石橋スタンドゐの一」@大阪石橋

おっちゃんばっかの渋い酒場ラブな私も、シャレオツな立ち飲みで飲みたくなることもある。だって女の子やもん♥たまにはエェ雰囲気でイカしたお酒とアテを嗜み、女子力を強化せんとね。
阪大のお膝元、大阪石橋。学生を迎え入れる飲食店が軒を連ねる一角にオープンして2年目の「石橋スタンド」。海外のバルかと見紛うほど洒落た外観からの、吹き抜けの高い天井で開放感溢れる店内。デニムシャツのヤングなスタッフさんがにこやかに向かえ入れて下さる。ここはカフェか!?いや、紛れも無い酒場や。
私のクラフトビールブームに火をつけた大阪、日本が誇る箕面ビールでステキに乾杯。香り高く心地良い苦味を味わいつつツマむのは塩モツ煮込み。丁寧に下処理されたモツは、プリッと弾力を感じたと思ったら、すぐにとろっふぁっプル~んっと溶けてもた!旨みをたっぷり吸った底に潜むクタクタの葱も名傍役。燻製は店の2階で作られるオリジナル。強過ぎない適度な燻製香で素材の味も生きている。定番ネタに加え、子持ち蒟蒻なんてオモロイやんか。個性的なアテには個性的な酒をば。ビーフィータージンにラフロイグを合わせ、ライムと大葉でアクセントを加えた薫るジントニックとの相性ピタリ。兄ちゃん、ヤルがな~!豚肩ロースの箕面ビール煮込みは、その名の通り箕面ビールのピルスナーを使い3時間ほど煮込まれるそう。ほろほろっと口中でほどけるやわらかさでロースなのにあっさり頂ける。お出汁にくぐらせ頂くオムレツ風明石やきは、ふぁっとやわらか玉子の中にタコがかくれんぼ。紅生姜にネギを合わせたやさしい和の味わい。地元池田の地酒「呉春」を合わせて、くぅ~っ!到底、立ち飲みのアテとは思えぬこれら逸品を生み出すシェフは、フグの調理免許まで携える本気の料理人。一見コワモテながら(失礼っ)その笑顔はとても温かい。そんなシェフがドヤ顔を見せる〆の一品はカルボナーラーメン。同じく池田発祥のチキンラーメンを使ったオリジナルな一品。鉄鍋で供されたそれは、なるほど、ラーメン…いや、パスタ?全体をよく混ぜ口に運んだそのフワトロさ!チキラーの独特の濃い味・塩気の後にカルボナーラ仕立てのまったりまろやかさが絡みつく!黒胡椒のピリリが味を引き締め、次々に箸を進ませあっちゅー間に完食。めっちゃヴォーノやん!
”石橋降りたらゐの一番に駆けつけて!”の思いでつけられた店名。ヤングのみならず、おっちゃんも姉ちゃんもおひとりさんも、そら駆けつけてまうわ!

第41回「立呑処 大川」@大阪大正

何てことのない『普通』の酒場。華があるわけではない。個性的な一品があるわけでも特別なサービスがあるわけでもない。だけど、つい足が向いてしまう、ただそこで呑むだけで良い、そんな『普通』の酒場が心地良かったりする。
大正駅前に構えて47年の「立呑処 大川」。先代が始めた酒屋やスーパーマーケット業を含めると約100年続いているという、古くから地域に根付く老舗。
駅改札を出た目の前に煌煌と光る看板が酒飲みを惹き寄せる。「ぃらっしゃい!まいどぉ!」、八百屋だか魚屋だかに足を踏み入れたかのように威勢良く迎え入れられた店内は、久しぶりなのにホッとする。早い時間にも関わらず、変形Uの字カウンターは既にお客さんでいっぱい。男性客が大半を占める中、女性二人組もいてはるわ。珍しな~思たら、ドームでのライブ前に軽く一杯と立ち寄ったらしい。そんな彼女たちに「ぃってらっしゃ~ぃ!」笑顔で見送る色ツヤの良い男性が店主。その笑顔がこちらに向き、「お姉ちゃんもライブ?」いえいえ、私はただ飲みに来ましてん。「嬉しな~」。私も何だか嬉しな~。大瓶もろてチマチマとしじみ佃煮をつついていると、カウンター内ではお揃いの赤のポロシャツに酒蔵の前掛け、白帽を身につけたスタッフさんの掛け合いが繰り広げられる。何てことのないヤリトリさえ客の笑いを誘う。しょーもない芸人よりよっぽどオモロイ。さすが大阪人やわ。投げ銭代わりに客から酒を進められれば『一気飲み』がここ「大川」のルールやて。道理で店主さん、いつも頬っぺ真っ赤なはずや。商売人魂なんかただの酒好きなんか知らんけど。
掛け合いの最中にもあちこちから注文がかかる、名物の若鶏から揚げ。ニンニクが香り、衣カリサクッ中ジューシィ。みんなが大好きな王道から揚げ。熱々を頬張りながらビールをググッ。添えられるポテトチップスが妙に嬉しく、小さな幸せを噛み締める。「オススメやから飲んどいて!」の山田錦は、発売元を見るとこの店の名が記されるオリジナルの一本らしい。旨みしっかりながらスッキリとした飲み口で、水の如きスイスイいってまうわ。血液サラサラ仕様?たっぷり玉葱オンザのあじ南蛮漬け、〆具合が絶妙で脂の乗ったきずし。サービスのたくあんは、たっぷりの味の素が昭和を思わせる。エライ地味になってしもたけど、茶やグレーの地味な色のアテこそ旨かったりすんねん。立ち飲みに余計な華やかさは要らん。酒と笑顔があればそれで十分やん。しみじみ、おおきにですぅ。

第40回「BEER STAND molto」@大阪梅田

ビール離れが嘆かれて久しい昨今。まずはの乾杯で、「僕カシスオレンジ!私ウーロンハイ薄めで!」などと言われるとガックリきてしまうのは私だけやろか?がしかし、その一方で、クラフトビール熱が湧いているのも事実。かく言う私も、遅まきながらブームに乗っかった。いや、その魅力に引き込まれ、取り憑かれてしまったのだ。以来、週に一度は飲まないと禁断症状さえ起こってしまう…。
人々を魅了して止まないクラフトビールを気軽に味わえるお店が、阪急梅田駅すぐの「BEER STAND molto」。全国から集めた約30種のボトルビールに加え、常時6種の樽生をスタンディングスタイルで楽しめる。樽生はサイズも選べ、初心者にも色々試したい人にもありがたいねん。ボトルは冷蔵庫からセルフで。コンビニで買うてその場で飲むみたいな手軽さがえぇやん。せやけど、どれがどんな味か分からへん、なんて心配はご無用。スタッフさんが手取り足取り説明下さる。
樽生のペールエールとアマテラスIPA。サーブと同時にグググッ!といったらアカン。まずは色と香りを楽しむ。ビールてこんなに香り高いんか!それぞれちゃうんか!と都度、驚かされる。樽生は、樽が空けば次のビールと入れ替わるため、次回また飲めるとは限らへん。まさに一期一会。濃いのん軽いのん、ガツンと苦いのんフルーティなのん…多種多様なビールに合わせるアテも充実。冷製の牛タンと長葱のアーリオオーリオは、タンの歯ごたえにニンニクが胃袋を刺激し、食欲飲欲を活性化させる。ポテサラは常時3種。ん?ポテサラはポテサラちゃうん?ちゃいますねん。マヨネーズ不使用、さつま芋と男爵芋2種の芋がベースのポテサラに、肉乗っけたりチーズ入ったりしますねん。ピンクな肉が芋を覆い隠すローストビーフのポテサラは、フォンドボーにニンニクとアンチョビソースで。こんがりソテーされたプリッと牡蠣と九条ネギのポテサラは、牡蠣とトマトソースで。庶民の味ポテサラも、見事な一皿に仕上がってます。蓮根の食感が楽しいキッシュ、蟹身が乗った贅沢なリゾット。どれもクラフトビールの味を邪魔せず、且つビールを進ませる逸品ばかり。ブイヨンであっさり仕立てのボリートはサルサヴェルデを添えて。おでんには熱燗やろ!なんて考えは一旦封じ、香り高いクラフトビールとどうぞ。
飲むほどにますますその香り、味わい、余韻の虜になってしまうクラフトビール。ちょっと贅沢やけど、この一杯のために明日も仕事頑張ろか。

第39回「天満酒蔵」@大阪天満

酒場巡りは私の人生の最大の楽しみだ。街を歩き良さげな店にフラッと入りサクッと飲んで次へと流れる。アタリの店もそうでない店も、新規開拓のドキワクはたまらん。きっと私はこれからも酒場を渡り歩く。だけど、ふと落ち着きたくなることもある。安らぎを求め古巣に帰りたくなることもある。あぁ、そうか。散々色んなオンナと遊び倒し、最後には妻の元へと帰る夫の気分ってこんなんかな。知らんけど。
今年も残すところあと少し。1年の締めくくりは落ち着ける酒場でまったりしたいなぁ。せや、あそこに行こう。すぐさま頭に浮かんだのが「天満酒蔵」。この地に構え約48年。店名が示す如く、大阪天満の重鎮とも言うべき名酒場。まだ酒を始めて間もない頃から通う大好きな場所。3年前の夏、1代目の思案の末一時閉店するも、「この店をこのまま終わらせたらあかん!」娘さんが後を引き継ぎ再び息を吹き返した。
朝11時の開店から、長いカウンターには既に酔いお顔のお客さんがぎっしり。ひとり静かにグラスを傾ける御仁、大きな声で笑い話すおっちゃん2人組、ほんわか微笑ましいご夫婦、それぞれにひと時を楽しんではる。自分も席に着き、まずこの平和な空間を眺め、肌で感じるんが好きやねん。そんな矢先、お昼前には軽やかな足取りで出て行かれる方も。思わず「おつかれさまです~」と囁いてもたわ。
大瓶・どて焼・ポテサラの三種の神器を揃えてまずは乾杯。近くの天満市場や福島の中央市場から毎日仕入れられる新鮮魚介も豊富で安いんやわ。大胆な厚切りまぐろ、こりっぷりの鯛。スペースを考慮してか、醤油皿を重ねて供されるスタイルも名物やと思うてる。鉄板で焼かれ焦げ目が食欲をそそるねぎまは、しっかり目の塩気で酒を誘う。ならば、と、店の雰囲気にピタリなアルミのチロリで供される日本酒を。特選、上撰の二者択一ゆうんも渋いやんか。御仁たちに人気の至極シンプルなえのき塩焼は、ブラックニッカと樽ハイを合わせたオリジナルのハイボールで。これ、飲み過ぎ注意やな。
キビキビとした動きが気持ちの良い2代目、シュッと決まったショートヘアが男前な女将さん、店名が入るお揃いのシャツを着たスタッフさんが居て、客が居る。そして、その空間を静かに見守るように、1代目がひとりカウンターで飲る。気取らず気負いなく、ただ純粋に酒と肴を楽しむ王道酒場。「天満酒蔵」の復活に胸を撫で下ろし、「ありがとう」と呟いたのは私だけちゃうやろね。そして、「これからもよろしゅうに」。

第38回「守破離」@神戸三宮

関西在住、関西ラバーながら、東京下町にも憧れを抱き続けている私。「あそこ行った?」「あそこえぇやんな!」。初対面ですっかり意気投合した彼女こそ、ここ「守破離」の店主。私同様、東京下町酒場に惚れ込み、経験も無いまま三宮路地裏に勢いで店をオープンさせ3年ほど。見つけ辛く入り辛い印象もまた、酒飲みの心くすぐるんやわ。生粋の西成っ子である彼女のモットーは、酒は東、食は西。おもろいやん。”東西融合酒場”、楽しませてもらいましょ。関西ではまだ飲めるお店が少ないシャリキン。冷えたジョッキ・ホッピー、そしてシャーベット状に冷やされたキンミヤ焼酎の三冷が見事に再現される。ここに来たらとりビーちゃうくてシャリキンやね。料理はおまかせで。コレ食べといて!のホルモン煮込み。西成某店のそれを再現した一品で、バサ(フワ、肺)やシロなど、牛の内蔵をしっかり下処理し丁寧に煮込まれ臭みなぞ一切無し。西成風に仕上げるための煮込み時間は秘密やて。ほろとろ~んっとごくやわらか、旨みたっぷりのスープまで飲み干したくなる。合わすは東の下町酒、バイスサワー。初めてこの名を聞いた時は、何やアヤシイ酒か!?と戸惑ったっけ。キュートなピンク色とは裏腹に、スッキリ飲みやすくグイグイ肝臓におさまるも、調子に乗ると後でヤラれる強者。かく言う私も、この日すっかりヤラれてしもたんは言うまでもない…。ホルモン串焼きも牛。歯ごたえの心臓、脂のりのりミノ、ブリジュワッと丸腸。東京やきとんには負けへんで!大阪下町風甘辛おでんにはちょいと辛子をつけて。キンミヤ焼酎を使った下町ハイボールで流し込む。合うぅ。見事に東西の融合や!続いても関西らしい一品、バサの天ぷら。醤油に一味を合わせたタレでいただくんがオツ。斯様にその日のおすすめが全6品供され2000円とな。食にうるさい関西人も納得ですわ。〆は粉もんもろとこ。リクエストでチャチャッと焼いて頂いたパクチーたこ焼き。オリーブ油と塩が合いそやね~のひと言に、「いや、店の雰囲気ちゃうから」とバッサリ切り捨て。コレどやろ?旭ポン酢をぶっかけ明石焼風に。湯気とともに立ち上る独特の香り、たまらん!これやったら東の方もお気に召すんちゃいます?!気になる方はお尋ねあれ。デザート代わりに甘ぁいトンボワインをググッといったら、またキツイお酒欲しなってしもた。あかんあかん。正しき酒飲みはシュッと〆なあかん。それが東西問わずの粋っちゅうもんや。ほなまた、おおきにね!

第37回「呑喜」@大阪萱島

一目惚れした。その出で立ち、その香り、その温もり…。初秋のとある夕刻。出会った瞬間、恋に落ちた酒場、「呑喜」。
御神木が突き抜ける駅のホームが有名な萱島。高架下が出来て以来約30年、朝から晩まで酔客で賑わう地域密着型、酒屋経営の立ち飲み。元々ふたつの酒屋が共同でスタートされたそうな。先代に続き店長の任務を任せられたのは、開店から5年ほど、当時18歳でバイトに入った祐子さん。現在、女性パートさんでまかなわれる全スタッフを最年少の彼女が仕切る、すなわち、この酒場の主なのだ。いやはや、アッパレ。
古き良き味わいを保ちつつ清潔で明るい店内は、夕方の早い時間にしてほぼ満席。カウンター両隣さんに場所を空けていただき大瓶で乾杯。スパゲティサラダとどてをつつく。大阪人のソウルフードであるどては、売り切れるとご丁寧に「どては●曜日までありません」と記される人気ぶり。仕込みが追いつかなければ胃袋におさめられへん。白味噌仕立に大ぶりのスジ肉がこりくにゅっ。少し時間が経つだけで表面にピチッと膜を張るコラーゲンたっぷり感とあらば、御仁方の肌ツヤが良いのにも頷ける。私も負けんとモリモリいただこ。単に”シチュー”とボードに記されたそれは白か黒か?登場するまで妄想を膨らませつつ、温かな湯気を立て我が元にやってきたのは白!この雰囲気には白やで!せやろ!誰に何処にとなくドヤ顔を晒しながら口に含むと、期待を裏切らぬ、いや、期待を上回る優しさ愛情たっぷり。薄らこみ上げる涙とともに飲み込むと、胸元がクーッと熱くなった。
必食やで!と言わしめる、日によって具材が変わるかき揚げは、この日は玉ねぎ。手の平ほどもあるボリューム。揚げ立て熱々サックサクに玉ねぎの甘みがぐいぐい押し寄せる。天つゆも添えて120円は、もう涙こらえ切れませんわ。地元の魚屋さんから仕入れる、厚切りで美しい紅のまぐろ造りは、大阪ではあまりお目にかかれぬ三重県の地酒「作」とともに。米の旨みがしっかりしつつ、食を邪魔しないスッキリとした飲み心地が何とも。珍味も追加し究極の晩酌セット、一丁あがり!
隣あった長年通うという陽気なお父さん。「ワシなんてまだまだや、開店当時から来とる人もわんさかおるで!」。仰せの通り。笑顔のスタッフさんと笑顔の酔客。驚くほど安くて旨くて温かい酒肴の数々に、酒好き皆が惹かれるのも至極当然。かく言う私も然り。ビジュアルに惹かれ内面に惚れ、その温もりに涙し…。私もう、「呑喜」にゾッコンですわ!