第29回:「かんちゃん」@大阪天六

料理がウマい店はあそこ。安さならこっち。人に会いたけりゃそっち。雰囲気なら…。酒場選びのポイントは数あれど、その全てを網羅する店ゆうんはなかなか 難しい。でも、あるんはある。好みにピタリな酒場に辿り着けるのは熟練の技か幸運か。私が「かんちゃん」に出会えたんは、まだ酒場初心者だったウン年前。 飲み友に連れて来てもろたおかげ。天満の外れの一角に構えて14年余り。長年のファンはもちろん、ご新規さんも増え続ける名店なのだ。暗がりに煌煌と光る 看板、だら~んと下がる暖簾、どこか哀愁漂うこの構えも酒飲みを誘うんよね。7~8人でいっぱいの店に立つのが、ピシッと整う髪にキリリとしたお顔立ちの 一見、強面ながら、ピンクの上着×ジーパンというカジュアルさ、笑ったユルい表情が心を和ませる、マスターの”かんちゃん”。久々の訪問で昔話に花を咲か せつつ、白ワインスプリッツァーをキュッ。元ホテルマンという経歴を持つゆえの料理も人気の秘訣。優柔不断な私に「ゆっくり考え~」の一言が嬉しわぁ。
独特の形でピロンピロンッとした舌触りも楽しいヌボーレ(パスタ)に、マスタード入りのマヨソースがたっぷりと絡む、定番マカロニサラダ。名物のロースト ビーフは、ホースラディッシュと甘めのタレで。寸分のパサつきもなく見事なまでに肉汁がとじ込められる。赤身の旨味が最大限に感じられ、肉感ありつつデリ ケートな味わいに赤ワインが進んでしゃーない。甘い味噌が染み込むプリップリのとりもも肉味噌漬け焼きは麦ロックやね。「熱いで!」のぐつぐつラザニア風 スパゲティーグラタン。ぽってり濃厚ホワイトソースと肉の旨味たっぷりのミートソース、そしてスパゲティーのトリオ。食べてみるとアラ不思議、ほんまにラ ザニアみたいやん!おもろっ!おいしっ!お隣さんも堪らずご注文やで。可愛らしい小さなココット皿で供される玉子のオーブン焼きカルボナーラ風も秀逸。セ ンスが光る和洋折衷な逸品が立ち飲みで?この価格で?!と驚きと酒が止まらんで困ってまうわぁ。
狭い調理場を行き来し仕事をこなす真面目な一面と、テレビを見て笑い、ふと客に話を振るという自由な一面の交錯から生まれる独特な空気感のファンも多いは ず。数年後も数十年後もここに変わらず「かんちゃん」が居てほしいなぁ…と思うファンも多いはず。自分好みの酒場で酔いしれる幸せ。たまりまへん。

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